202207091 日本語教室(土曜クラス)では、2年ぶりに学期末の「お楽しみ会」を開催しました。昨年度まではずっとオンラインで授業を行い、今年度は2つのグループに分けて対面とオンライン授業を交互に行っていましたので、初めて全員が顔を合わせる場にもなりました。(NO.22-5)

日 時:2022年7月9日(土)10:00~11:30
場 所:アビスタ ホール
参加者:日本語学習者19名、家族5名(子ども4名、夫1名)、ボランティア14名 合計38名

 学期の最後に一回ずつ、年に三回行われる「お楽しみ会」では、通常、入門、初級、中級に分かれて勉強している学習者とボランティアが一堂に集まります。普段の授業よりリラックスした内容と雰囲気で進行されので、親交や言語の理解が深まります。ここしばらくはオンライン授業を行ってきたため、お楽しみ会も画面上に制約されていました。対面での「お楽しみ会」は二年半ぶりになります。
 今日も暑くなりそうだ。心配は、大半の学習者さんにとって、アビスタに来るのが初めてだということです。「駅から手賀沼に向かって南にまっすぐ」と、地図も併せてお知らせしたのですが、入門や初級の方々にはわかってもらえただろうか?
 ホールのカギを開け、窓を開け、机やいすやホワイトボードを並べ、準備は整った。と、続々と、おずおずと、学習者さんたちがホールに足を踏み入れて来た。気がかりだった、スリッパに履き替えるという日本式のシステムに抵抗感はないようだ。胸に貼る名前シールとペットボトルを渡しながら聞いてみると、何人もが「迷子になりました」「やっと、来ました」「大変でした」と笑顔の返事。“がんばって来てくれたことが嬉しい。”
 まずは、自己紹介。担当のボランティアから呼ばれて、名前、出身国、趣味について一言ずつ話す。事前に練習してもらってはいるが、それでも、入って間もない学習者さんには、緊張することだ。隣で、中級の学習者さんが小声で通訳してくれたので、理解し、ほっとしたように名前を言う。有難いフォローで、これも、対面なればこそだろう。
 体操が始まる。202207092
 「両手を広く、前と後ろに広げて立ってください。他の人にぶつからないように」
ヨガの講師でもあるボランティアのメンバーは、声がよく通る。呼吸を意識しながら上半身をほぐすストレッチを行う。うまく聞き取れなくても、見よう見まねで間隔をあけ、講師や左右の人を見ながら同じ動きをする。不審げな顔で見ているだけだった人が、だんだん、一緒に体を動かし始める。表情もほぐれる。入ったばかりのベトナムからの若者二人がニコニコ体を動かしているのを見て、安心した。
 次は、「オノマトペクイズ」。202207093202207094
 名札に貼っておいた赤青シールによって二つのチームに分かれる。それぞれのチームの机の上には、ボランティア手作りの、冊子にした絵付きのクイズ10問が置かれている。
 ひらひら、きらきら、びゅうびゅう、にょきにょき、どきどき……。イラストに助けられてスムースに解答できるようだ。青チームでは、「もくもく」と「もぐもぐ」で検討が始まっている。煙はもぐもぐ? ごはんはもくもく食べる? どっちだっけ? ああでもない、こうでもないと、日本語でやり取りしている。結果、両チームとも全問正解だった。
 次は、今日のメインテーマ、「防災クイズ」。
 ボランティアの一人から提供された防災備蓄非常食品が机の上に並べられている。これは、今日の賞品としてお土産になる。
 大雨、台風、浸水、地震、災害の多い日本で、こんなときどうする? 普段からどんなものを備えておけばいい?
赤チームで盛り上がって検討されていたのは、いざというときにろうそく代わりになるのは、桃の缶詰か、ツナの缶詰か、という問題だった。
 「だって、油があるから」「桃缶がいいって聞いたことがある」「ぜったい、こっち!」
司会者から、「ツナ缶です。穴をあけて綿のひもなどを差し込んでランプの代わりにします」
と、正解が発表され、残念そうに解答用紙に×をつけていた。
 テーブル上の非常食を指さして「このように、ふだんから、長く保存できるものを用意しておくことを≪備蓄≫、びちくと言います」という説明があった。
 最後のお題は、「備蓄」の「く」から始まる「しりとり」。
 桃缶の誤答でがっかりした赤チームも、気を取り直して挑戦する。思ったより速いスピードで模造紙の空欄が埋まっていき(書くのも早い!)、両チームとも制限時間内にゴール(名詞を29個)まであと一息という成績だったのには驚いた。語彙をどんどん増やしてほしい。
 日本の学校に通う小学生二人が強力な助っ人となった赤チームが勝利し、先に賞品を選んだ。ビスケット、羊羹、アルファ米(キノコ味、カレー味・・・)の中から選びかねて、興味深そうに眺めている人もいる。「いつまで食べていいですか?」と、消費期限、賞味期限を尋ねる人もあり、今回のクイズが防災備蓄に対する関心の一端になることを期待する。
 ゲームの合間に、顔見知りになり、ことばを交わし、久々の母国語で楽しそうに話し込んだりしている人たちを見ると、通常授業を離れたコミュニケーションの場を提供できたのではないかと嬉しく思う。やはり、実際に顔を合わせるのは、有益なのだ。
 長く通う学習者の一人は、クラスのメンバーを気遣いながら「だって、AIRAのみんなは、家族みたいでしょ」と言い、こちらを幸せな気分にしてくれる。その信頼に応えるべく、日本で頑張る彼らの応援団であり続けたい。

(日本語教室土曜クラス 櫻田美季)